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1巻表紙
タイトル 狼と香辛料
レーベル電撃文庫
第1巻発売日2006年02月25日
既刊最新刊発売日2011年07月10日
最新刊発売予定日
著者支倉凍砂
挿絵文倉十
既刊全17巻
漫画化
アニメ化
その他第12回電撃小説大賞<銀賞>


おきに度10
燃★・萌☆★★★★☆☆☆☆☆☆
笑★・シリアス☆★★★★☆☆☆☆☆☆
ストーリ★・キャラ☆★★★★★★☆☆☆☆
エロ(★が多いほど↑)★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
世界異世界
恋愛
ストーリ
推移途中、中だるみ?
テキスト10
キャラクター
挿絵
雰囲気10
独自語



文章全般
此の世の中には沢山の物語がある。
そして、色んな婚姻譚がある。
それは人に限った話じゃないの。
神と人との異種婚姻譚。
剣も魔法も要らないファンタジー。
一緒に、旅をしてみよう?

主人公のロレンスは旅の行商人。
商品を色んな町に持って行くことで利益を得ているの。
そんなロレンスが立ち寄った村では豊作祭が行われていました。
それは神を祭るというよりも神を追い詰めるっていう不思議なお祭り。
それを見届けて村を出発したロレンスは、休憩した時にとっても驚くことになる。
いつの間にか馬車に少女が乗っていたの。
その娘は己が名をホロと言う。それは豊作の神とされる狼の名前。
ホロはこう言うの。あの村には約束を果たすためにいて、それはもう果たしたと。
もう、彼らに自分は必要ないと。だから、遥か昔にいた故郷に帰りたいと。
ヨイツ。それは地図にも忘れられた北の大地。そこまで連れて行って欲しいと。
それが、お人よしな行商人と、頭脳明晰な神さまの、片道だけの旅の始まり。

この物語はね、商いをしながら、ヨイツを目指す旅のお話なの。
その道程は簡単なものじゃない。何度も窮地に陥って、どうしようもなくなっちゃう。
いかにその困難を乗り越えるか。無事に、旅を続けるか。そういうお話だよ。
でね、そのメインになるのはやっぱり商売なの。それも、きちんとした経済のお話。
頭をフル回転させて、少しでも多くの利益を得るようにする。その駆け引きが、とっても面白いの。
ロレンスじゃ思いつかないようなことを賢狼のホロが思いつく。
どんなに窮地に陥っても、ホロが助けてくれる。けど、頼ってばかりじゃなくてロレンスも頑張る。
そうして、ロレンスが成長していくの。賢狼たるホロのパートナーに相応しくなるように。

一方で、最初に言ったように恋物語でもあるの。
ロレンスとホロは次第にお互いを信頼し合う。けれどそれにはとっても大きな壁がある。
それにね、旅はいつか終わるの。いつまでも続くように思えても、絶対に。
考えないようにしても考えてしまう。そんな二人がとってももどかしくて、面白いの。
信頼し合った頭の良い二人の会話は、息がぴったり合ってる。
比喩表現に富んでいて、多くを語らなくても察する事が出来る。
それだけ信頼しきっている二人なら、どんな困難でも乗り越えられる。そんな気がする。

文章はさっき言ったようにとってもセンスにあふれていて、その世界にぐいぐい引き込んでくるよ。
駆け引き、心象、すれ違い。
心の内側を描くことに長けていると思う。それでいて表には出さないんだよ。
心の内側を殆ど描かないのに、きちんと察する事が出来るように描くのって、凄いと思う。
経済についての描写も事細かく分かりやすくて、みんなが商人になったように読むことが出来る。
食べ物も飲み物も美味しそうだし、布や毛皮もあたたかそう。全ての描写が素晴らしいかな。

途中、ちょっと経済と関係無い出来事が多くなっちゃって、
それが好きだった人には物足りないことがあったけれど、あたしはこの作品、とっても好きだよ。

文倉十っていう人。あたしは好きだな。
ライトノベルの挿絵って言うより、童話の挿絵って感じかな。
あたたかくて、優しい気持ちになれるの。
塗り方がそういう感じだからかな?
あまり最近の傾向とは合っていない画風だとは思うけれど、
この作品には、こういう絵があっているんだと思うな。

キャラクター
なんと言っても賢狼ホロとロレンス!
この物語には沢山の人が登場するけれど、この二人がいないと始まらない。
ホロは廓詞が獣耳とアンバランスなんだけど、とっても様になってる。
とても賢いし、頼りになるし、神さまって言われているホロだけど、でも弱い部分もある。
それを埋めてくれるのがロレンス。だから、ホロがホントに可愛く見えるの。
素直になれなかったり、距離を取ろうとしたり。頭が良いからこそ考えてしまう事ってあるよね。
ホロの可愛さはロレンスが引き出してる。普段は尻に敷かれているけれど、ね。
そういう、二人の関係がとっても大好きだよ。

一期一会を大事に、色々な人と出逢って行くお話だけれど、
でもやっぱり縁はあるんだよね。いつかその縁が役に立つと気が来る。
ふと道を振り返ってみれば、沢山の人がいる。
わずかな間の関わりだけど、それは縁によって繋がっている。
人との出逢いを大切に。沢山キャラクターが登場する作品けれど、ぞんざいに扱っていない。
そういう、作品だと思うな。

雑記
人と神との婚姻譚。珍しい題材じゃないけれど、なんでこんなにあるんだろうね。
聖なるものへの憧れ? 侵してはならないことへの禁忌観?
確かにそれもあるかもしれない。
けれど、きっとそうじゃないんだよ。
恋が成就する為の最大の試練。それが神との婚姻譚なんじゃないかな。
それが成就する事は最大限の愛を表している。そんな感じがする。
だからみんな、読みたがるのかな?

愛情は、愛情だよね。でもそれなりの困難がある。それが、異種婚姻譚。
普通の恋愛も良いけれど、こういう、普通には無い障害がある恋愛も、良いよね。
……人ごとじゃないよ? 諠。
おわり。


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押したらタイトルに「狼と香辛料」と書いてねー