タイトル 『アネモイと。』シリーズ
レーベル一迅社文庫
第1巻発売日2008年06月15日
既刊最新刊発売日2010年05月01日
最新刊発売予定日
著者朱門優
挿絵鍋島テツヒロ
既刊2巻(完結)
本編 ある夏のアネモイと、あるいは空を泳ぐアネモイと。
ある秋の卒業式と、あるいは空を見上げるアネモイと。
漫画化
アニメ化
その他

おきに度
燃★・萌☆ ★★★☆☆☆☆☆☆☆
笑★・シリアス☆ ★★★★★★★☆☆☆
ストーリ★・キャラ☆ ★★★★☆☆☆☆☆☆
エロ(★が多いほど↑) ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
世界 同世界現代
恋愛 有(メイン)
ストーリ
推移 2巻で下落
テキスト 10
キャラクター 10
挿絵
雰囲気
独自語 少々



文章全般
あなたは、昔の事を全部覚えていますか?
例えば、約束。遠い昔に、誰かと約束をした記憶はありませんか――?
なんてね。でもこれは、端的に言うとこんな作品。

十五夜草町に住む日輪(たちもち-りん)と穂積之宮いちこは、幼なじみ。
でも、よくある幼なじみと違ってこの二人の関係は――、……主従関係?
輪の事を「わんちゃん」って呼んで下僕扱いするいちこと、反発しながらもまんざらではない輪。
いちこは全てが完璧で言葉遣いも丁寧。誰からも好かれてる。いちこに、輪は逆らえない。
そんなサディスティックの化身のようないちこが、ある日、顔を真っ赤にして輪にこういうの。
「わっ、わたくしと――『お見合い』なさって!!」
これは、無くしてしまった約束を取り戻す物語。神様と、幼なじみと交わした約束を。

んー、この作品はね、『お見合い』と『卒業式』があるの。今の所、ね?
でも、どっちもそのままの意味じゃない。それは『自分との』『自分からの』なの。
……ううん。少し違うかな。『自分と、相手との』かな。
相手だけ見ていても自分は思い出せない。
相手がどれだけ頑張っても、自分で見つけなければ仕方ない。
今はもう忘れてしまった大事なもの。それを取り戻す為に自分と向き合う。
変わらなければいけないもの。それを変える為に自分と向き合う。
それがメインテーマの作品かな。
この作品を書いたのは朱門さん。諠、好きだったよね?
ミステリーじゃないんだけど、伏線がしっかり張ってあって、終盤が凄く面白いよ。
テーマはとても単純なもの。だけど、とても大事なもの。
それだけに、書くのが凄く難しいはずなんだけど、この作品はとっても上手く纏めているよ。

この作品は、今言った通りお話自体もとっても良いんだけど、
それよりも良いのがテキストとキャラクター。すっごいの。
地の文は主人公視点なんだけど、それが凄く面白いの。笑えるって意味でね?
…………今、あたしが笑うのを変だって思ったでしょう。
……まあ、良いよ。似合わないもんね。でも、これは凄く面白かったの。
コントみたいな文章を、たーっぷり、味わって欲しいかな。

少し残念な所は、続巻があったところ。……こういうのは、珍しいかな?
一巻の、『ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。』で、もう完結したと思ったの。
だから、続巻がその二年後に出るっていきなり告知された時は、凄く驚いた。
当然、嬉しかったよ? でも不安もあった。それくらい、一巻で綺麗に纏まっていたの。
不安は、ちょっと当たっちゃった。二巻が出た事で、作品としての纏まりが薄れちゃった。
それが、残念かな。

鍋島テツヒロさんっていう人が描いてる。
『お見合い』では、繊細で、どこか幻想的な絵だった。
だけど、『卒業式』では、描き方がちょっと変わっちゃった。
よりデフォルメ化されたって言うのかな。線がはっきりして、色遣いも単純になっちゃった。
どっちが良いかって言えば、圧倒的に『お見合い』の方が良いな。
そういう意味でも、「蛇足」なの。

キャラクター
これがメインだと言っても良いかもしれない。それくらい、凄いの。
……さっきから凄いとしか書いていないよね。でも、そうとしか表現できないよ。
まずは、その個性。台詞一行で誰が喋ったのかすぐに分かるっていうのは、中々無いと思うな。
突っ込みの主人公、ボケと突っ込みのいちこ、ボケのアネモイ。
この三人の会話は、凄くテンポが良くて、読んでいて気分が良くなる。

あたしが一番好きなのは、やっぱりいちこ。
額面だけで見ちゃいけないよね。行動と内心がイコールとは、限らないもの。
本音を知った時に、どうしようもなく愛おしく感じると思うな。
……あたしも、こういうキャラクターを目指してみようか?

雑記
忘れちゃったこと、結構あるよね。
あたしも、思い出せない事沢山あるもん。
思い出せないだけじゃなくて、あったかどうかも分からない事だって、きっと沢山ある。
……その中に、とても大事な約束や想い出があったとしても、あった事すら思い出せない。
そんなの、悲しいよね。でもきっと、沢山ある。
どうしようもない事なんだけど……、やっぱり、悲しいね。
だから、このお話の二人は、きちんと思い出せて良かったね。