タイトル あの日々をもういちど
レーベルHJ文庫
第1巻発売日2007年08月01日
既刊最新刊発売日
最新刊発売予定日
著者健速
挿絵
既刊1巻(完結)
漫画化
アニメ化
その他

おきに度
燃★・萌☆ ★★★★★★★☆☆☆
笑★・シリアス☆ ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ストーリ★・キャラ☆ ★★★★★★★★☆☆
エロ(★が多いほど↑) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
世界 同世界現代(但し異能有)
恋愛 有(メイン)
ストーリ
推移
テキスト
キャラクター
挿絵
雰囲気
独自語 普通



文章全般
今は昔。
水際流という水際神社の青年は、
許嫁であり義妹でもある芽乃、侍大将の吉岡又衛門の反対を押し切って、
自らと一緒に、神社に伝わる名刀・白來光芳の力で鬼を封じるように命じました。
数年後、武器を整え万全を期して、封印を解くことを約束して。
……流が目覚めると、そこは400年後の世界。最新兵器の力で鬼を倒す光景を見る流。
自分の知っているものは何もなく、
大切な人も誰も居なくなってしまった世の中ですることなんて何も無くて。
水際神社に迎えられた流は、ただ時間を浪費する廃人同然の日々を過ごしました。
…………そんな流の前に現れたのは、
かつて姉同然に慕っていた、そして封印される前は種族間闘争で敵となっていた、
妖孤・夕凪だったのです。
……そんな、今を生きる過去の人たちの、お話。
――刻を超えた、純愛。

……らしいんだけど。
えっとね、お話自体は、悪くないの。うん。
ただ……何て言うのかな。あんまり期待しちゃ、ダメ。
それは内容もあるんだけど、設定とか、そういうのも含めて、あんまり期待しちゃうとダメかな。
それをちょっと説明するね。

まず、この本の著者は健速って言う人。
諠や言葉が好きな人だよね。PCゲームだと、有名な人なのかな?
それを知っている人は、どうしてもそのレベルを期待しちゃうみたい。だから、ガッカリしちゃう。
そういう人と、はじめて知った人とで温度差がある作品かな。
だから、著者の来歴は考えないで読むようにすると、良いかも。

内容は、さっきも言ったけれど、お話としては悪くないの。素材は良いのかな。
でも、あんまり上手く調理出来ていない。
何て言うんだろう、『ライトノベル』っていう媒体の尺に、慣れていない感じかな。
登場人物の数、展開、全部がとても一冊では纏められない感じがする。
ライトノベルでも、複数巻の続きもので出せば大丈夫だったかもしれないけれど、
プロットが一巻で終わらないとっていう感じのものだったから、中途半端になっちゃった。
一巻完結用プロットなのに、複数巻用の人物とシナリオを考えてしまったような感じ。
……分かるかな?
それで書いていたら、尺が足りなくなって削ったから、
キャラクターの魅力があまり表現できないで終わってしまった。
そういう、作品。
登場人物――特に現代の主人公とヒロイン――を削って、
流と夕凪だけにスポットを当てていれば、良かったのかも。
その方が、お話としても纏まりがあったかな。
……どうしても、小さく纏める感じにはなっちゃうけれどね。

絵は、双っていう人が描いてる。
ゲームでは描いていないと思うけど……、
ライトノベルの挿絵は、結構描いている人だよ。
全体的にはとっても上手だし、合っているとも思うんだけど……、
……時々、顔が平面的……と言うか、貼り付けた感じと言うか。
輪郭と合っていない感じがするかな?
顔の凹凸が、少し膨らみ過ぎていたり。そういうのがある。
そこだけ、ちょっと気になったかな。後は、大丈夫。

キャラクター
あたしは、ちょっと怒っています。
……っていうとちょっと大袈裟だけど、でも不満があるの。
さっき言ったように、キャラクターの魅力が引き出せていないっていうのもあるけど、
それ以上に気になったのが、この作品で不幸になった人が一人だけ居るっていう事。
それは、茅乃。
流の事が好きで、将来は結婚する予定だったのに、封印で流を失ってしまった。
どうすることも出来ないまま他の男性と結婚するしか無くて、
好きでもないのに子供を儲けなきゃいけなかった。
そして、失意のうちに早逝してしまった。
……なのに、流は夕凪と現代で再会して、一緒になる。
この作品のテーマは、帯にあるように『刻を超えた純愛』。
あたしは、それがちょっと納得いかないかな。
茅乃の気持ちを考えたら、ゾッとするもん。
想い人が居ないならまだしも、茅乃は流一筋だったんだよ?
何で、そこだけ『野菊の墓』みたいな不幸な展開なのかが、あたしには分からない。
本当に純愛だったのは、刻を超えられなかった茅乃なんだよ。
あたしは、そう思う。

それ以外だと……、現代の主人公とヒロインに、全然魅力が無かったのが逆に印象的だったかな。
やっぱり、一巻で二主人公は、難しいよ。

雑記
健速さんは、この後に『六畳間の侵略者!?』って言う作品を出したの。
それは、きちんと続きもので、今も続いてる。
この作品で分かった欠点を、きちんと理解して補った感じかな。
それは、簡単そうに感じるけど凄いことだと思う。
これとは全然作風が違うけれど……、
この作品は、きちんと『六畳間の侵略者!?』の礎になっているよ。
だから、この作品は、これで良かったのかもしれない。
欠点があったから、それを改善出来たんだよね。
最初から完璧であるに越したことは無いけれど……、
成長っていう意味では、この作品にもちゃんと意味があるんだよ。
意味の無い作品なんて無い。著者にとっても、読者にとっても。
それを、忘れないで。