タイトル “文学少女”シリーズ
レーベルファミ通文庫
第1巻発売日2006年5月10日
既刊最新刊発売日2009年12月26日
最新刊発売予定日2010年04月29日
著者野村美月
挿絵竹岡美穂
既刊12巻(長編8巻(完結)、短編2巻、外伝2巻)
本編 “文学少女”と死にたがりの道化
“文学少女”と飢え渇く幽霊
“文学少女”と繋がれた愚者
“文学少女”と穢名の天使
“文学少女”と慟哭の巡礼者
“文学少女”と月花を孕く水妖
“文学少女”と神に臨む作家上
“文学少女”と神に臨む作家下
短編 “文学少女”と恋する挿話集1~3
外伝 “文学少女”見習いの、初戀。
“文学少女”見習いの、傷心。
関連書籍 “文学少女”の追想画廊
“文学少女”Fantasy Art Book
“文学少女”のグルメな図書ガイド
劇場版“文学少女” -appetizer-
漫画化2009~
アニメ化劇場版(2010年)、OVA(2010年)
その他 2007年ライトノベルアワードミステリー部門賞
このライトノベルがすごい!2009 作品部門1位
このライトノベルがすごい!2009 キャラクター女性部門1位(天野遠子)
このライトノベルがすごい!2010 キャラクター女性部門3位(琴吹ななせ)
このライトノベルがすごい!2009 キャラクター男性部門5位(井上心葉)
このライトノベルがすごい!2009-2010 イラストレーター部門1位

おきに度
燃★・萌☆ ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
笑★・シリアス☆ ★★★☆☆☆☆☆☆☆
ストーリ★・キャラ☆ ★★★★★★☆☆☆☆
エロ(★が多いほど↑) ★★★☆☆☆☆☆☆☆
世界 同世界現代
恋愛 有(メイン)
ストーリ 10
推移 本編は上昇。短編、外伝で下落
テキスト 10
キャラクター
挿絵 10
雰囲気 10
独自語 ほぼ無



文章全般
この物語は……。小説を書くのを止めてしまった、男の子の話。
主人公の井上心葉は、昔「井上ミウ」っていう「女子中学生」として文壇デビューしたの。
でも、その代わりにとても大事なものを失ってしまった。
そして、物語を紡ぐことを止めてしまったの。
そんな心葉が進学した高校で出逢った、一人の先輩。
おさげは腰まであって、とても細い天野遠子先輩。
一見、普通の先輩なんだけど……、
実は、物語を「食べちゃう」くらい大好きな、文学少女だったの。
凄く美味しそうに「本」を食べる遠子先輩。甘かったり、辛かったり。
名作はとっても美味しいんだって。
そんな遠子先輩と出逢って、心葉はどう変わるのかな。
そして、遠子先輩は何で心葉に書かせたいのかな。
そんな、お話。

この作品のテーマは、成長、だね。
だからなのかな。凄く沢山の試練が心葉にはある。
でも、それを乗り越えてこそ成長するんだよね。
シナリオなんだけど、一巻(死にたがりの道化)は、ちょっと好きじゃなかったかな。
内容が好きじゃないっていうより、詰まらなかったって感じかも。
でも、二巻以降はちゃんと面白いから、一巻で読むのを止めたりはしないで欲しいかな。
どういうお話か、なんだけど、純文学とミステリーが合わさったような感じなの。
先ず一人、犯人が居る。その犯人は、ある文学作品に似たような悩みや葛藤を抱いてる。
そして事件が起こったら、文学少女である遠子先輩が事件を「想像」するの。
普通のミステリーでいうと「解決」かな。
それと同時進行で、心葉や遠子先輩、周りの友人との人間関係や恋愛関係が進んでいく感じ。
……なんだか、説明が難しいなぁ。ちょっと読んでみてくれると、分かると思うんだけど。

このお話は、凄く、淡くて、儚くて、綺麗。
でも、綺麗ってことは、その反対も孕んでいるってこと。
とても醜くて、残酷で。
でもね。
最低を知らないと、最高は分からない。
この物語は、影があるからこそ、とても美しく感じるんだと思うな。
……あたしだって、諠のまだ知らないところが、あるんだよ?

あと、感じたことなんだけど、
ちょっと、男性には、きつい内容かも。
著者が女性だからなのかな。女の子に容赦が無い。
援助交際とか、妊娠とか。
そして、人間関係もやっぱり女性視点なの。
だから、ちょっと注意が必要かな。
ラブコメだと思って読むと、ショックを受けるかも。

本編はとっても面白いんだけど、外伝、短編で下降気味かな。
この作者は、ヒロイン全員を幸せにしようとするの。
それが、男性には分からないんだよね。諠がやっているゲームでも、描かれないもの。
後で書くけれど、心葉の恋愛は、三角(四角?)関係なの。
そういう恋愛は、最後はやっぱり一人しか残らない。
どんな過程を辿っても、心葉の隣に居るのは一人。
諠のやっているようなゲームだと、そこで終わりかもしれない。
でも、この物語は続く。全員が幸せになれるように。
それが、男性の読み手としては、受け入れられないかも知れない。
選ばれなかったヒロインの隣に、主人公とは別の男性が居ることに、耐えられないかも知れない。
だから、敢えて描かない方が、良かったんじゃないかなってあたしは思うよ。
……変かな? あたしの感性は、諠に近いのかもね。
それと、本編が完結しても外伝と短編が続々と出てくるから、ちょっと本編が薄れてきてる、かな。
綺麗に終わったんだから、そこで止めておいても良かったんじゃないかなぁ。
あたしは、そう思う。

竹岡美穂さんが描いてる。
この人の絵の特徴は、水彩調で淡いってところかな。
だから、この作品にとっても合ってると思う。他に適役、居ないんじゃないかな?
絵のタッチから、どうしてもシリアスな印象の方が強いんだけど、実際はそんなことない。
明るい時だって、とっても可愛い絵を描いてくれる。
それが、ちょっとギャップがあって余計に良いの。
この絵があるから、今の"文学少女"があるって言っても良いかもね。

キャラクター
大きく分けて神さまの心って荒魂と和魂があるよね。
人も同じだと思うの。本当は直霊と四魂、だっけ? でも、人の心にも表裏があるよね。
心葉も、遠子先輩も、人には話せない事がある。それは、誰だって持ってる。
それが、登場人物全員に関して、とっても良く描けていると思う。

ななせっていう、心葉が好きなんだけど素直になれない女の子がいるんだけど、
その、ななせと遠子先輩と、心葉の三角関係が或る意味で物語の主軸になってるの。
その人間関係は、段々、膨らんでいく。良くも、悪くも。
その人間関係が、嫌になっちゃう人もいるかも知れない。
でも、最後まで読んで欲しいな。きっと、読んで良かったって、思えるから。

あたしが好きなのは、遠子先輩。
一見とても真面目な優等生だけど、おっちょこちょいで、猪突猛進で、意地っ張りで。
本を食べて、「甘い」とか「辛い」とか、一喜一憂してる、凄くお茶目な先輩。
でも、誰よりも本が好きで、誰よりも真剣で、誰よりも頼りになる。
遠子先輩が大丈夫って言えば、大丈夫な気がしてくる。それって、凄いことだと思う。
あたしも、こんな人になりたいな。
……本を食べるのは、嫌だけど。

逆に、麻貴先輩は、嫌い、かな。
何て言うのかな。作品が纏まっているのに、わざと壊しているような人。
遠子先輩に絵画のヌードモデルになれって言ったり、
作品のちょっとエッチな場面では絶対に出てくる人。
キャラクターとしては、作品で大事なファクターなのかも知れないけど、
あたしは、この作品には要らなかったんじゃないかって、思う。

雑記
遠子先輩が、本当に美味しそうに本を食べるの!
フィッツジェラルドの『グレート・ギャッツビー』は
「きらきらのキャビアをシャンパンと一緒にいただいている気分」
お風呂でふやけたバーバラ=カートランドの『修道院の女神』は
「ビスケットをピンク色のシャンパンに浸して食べるような感じ」
だって!
ページを破って食べる度に本当に幸せそうに言うから、読んでてお腹が空くの。
……もし、美味しそうに見えたからって、食べちゃダメだよ?
絶対に紙とインクの味しかしないんだから。
…………食べて、ないからね?