タイトル 半分の月がのぼる空
レーベル 電撃文庫
第1巻発売日 2003年10月25日
既刊最新刊発売日 2006年08月25日
最新刊発売予定日
著者 橋本紡
挿絵 山本ケイジ
既刊 8巻(本編6巻、短編2巻)(完結)
本編 半分の月がのぼる空 looking up at the half-moon
半分の月がのぼる空2 waiting for the half-moon
半分の月がのぼる空3 wishing upon the half-moon
半分の月がのぼる空4 grabbing at the half-moon
半分の月がのぼる空5 long long walking under the half-moon
半分の月がのぼる空6 life goes on
短編 半分の月がのぼる空7 another side of the moon-first quarter
半分の月がのぼる空8 another side of the moon-last quarter
ビジュアルノベル 半分の月がのぼる空 one day
画集 半月-HANGETSU-
新月-SHINGETSU-
漫画化2006~2008年
アニメ化2006年
その他 テレビドラマ化(2006年)
実写映画化(2010年)
完全(リメイク)版がアスキー・メディアワークスより発売(2010年)
このライトノベルがすごい!2005 作品部門16位
このライトノベルがすごい!2006 作品部門10位
このライトノベルがすごい!2007 作品部門4位
このライトノベルがすごい!2006 キャラクター女性部門6位(秋庭里香)
このライトノベルがすごい!2008 イラストレーター部門20位

おきに度 10
燃★・萌☆ ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
笑★・シリアス☆ ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
ストーリ★・キャラ☆ ★★★★★☆☆☆☆☆
エロ(★が多いほど↑) ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
世界 同世界現代
恋愛 有(メイン)
ストーリ 10
推移 安定
テキスト 10
キャラクター 10
挿絵 10
雰囲気 10
独自語 ほぼ無し



文章全般
あたしはこの物語に出逢えて、本当に良かった。
だから、諠にも教えるね。
知って欲しいから。あたしが、一番好きな物語を。

生きていること。
今、生きているということ。
一番大切な人と。
今、生きているということ。

この物語は、ある普通の少年と、心臓に病気を持った、ちょっと普通じゃない少女の物語。
少年、戎崎裕一はA型肝炎で病院に入院するの。A型はそんなに危険じゃないんだって。
それで、あまりに退屈だから夜な夜な抜け出すの。
そうすると見つかって看護婦さん、谷崎亜希子さんに怒られちゃう。
逃げたりして肝炎が悪化して退院が遅れたりもしちゃう。
そんな裕一がある日、別の病棟で女の子を見るの。
とっても可愛くて、お人形みたいな女の子。
――でも、その子が居た病棟は、重病患者しか居ない病棟だった。
女の子、秋庭里香は先天性心臓弁膜症っていう病気で、ずーっと病院暮らし。
学校には当然行けないし、病院からも出られない。……そして、長くは生きられない。
そんな里香をちょっと気にしていた裕一に、亜希子さんがある提案をするの。
夜抜け出すのを黙認するから里香の話し相手になれっていう提案。
だから裕一は里香の話相手になるんだけど――
――里香は見た目と違って、凄く気が強くて、凄く意地っ張りで、凄く気まぐれだったの。
裕一にも、ミカンを投げたり、本を取ってこいって命令したり、色々酷い事をするの。
……でも、裕一の前でだけは、笑顔を見せるようになる。
里香は、全然笑わない子だったの。だけど、裕一と話すうちに、裕一には心を赦すようになる。
そして、裕一も里香を好きになる。
そんな裕一と里香の、箱庭のような狭い病室での、何処にでもありそうで、何処にもない恋物語。
それが、このお話。

里香を好きになるっていうことは、自分の未来も、何もかもを犠牲にしなくちゃいけないんだよ。
里香はいつまで生きられるか分からない。明日死んじゃうかもしれないし、来年かもしれない。
そんな子を好きになるっていうことは、気持ちだけじゃダメなんだよ。
気が強くて気まぐれで意地っ張りで我が儘ですぐ怒る里香。
でも、誰より可愛くて誰より素直で誰より勇気があって誰より優しくて誰より裕一を信頼している里香。
そんな、とっても、とっても大切な女の子を守り、
共に生きる為に自分に出来ることを、精一杯探す裕一の物語。
失敗して、失敗して、失敗して、成長する。
聖人でも賢人でもない、普通の男の子が大切な女の子の為に頑張る、物語。
「命をかけてきみのものになる。」
このコトバ、里香から裕一に、裕一から里香に送られたこのコトバに全てが集約されていると思うな。
この物語が、あたしは大好き。「普通の幸せ」が、こんなに輝いて見えたのも初めてかな。

里香が病気じゃなかったら、もっと幸せになれたのに。
そう思ったこともあったよ。でも、そうじゃないんだよね。
里香が病気じゃなかったら、裕一は里香と出逢えなかった。
二人の人生も、きっと、もっと詰らなかった。
だから、良かったのかな? 少なくとも、二人は良かったって言う気がするな。
長く鈍色の光を放つか。それとも、一瞬眩むような輝きを放つか。
あたしは、後者の方が一日一日が宝石のように思えて、素敵だと思うな。
勿論ずーっと光り輝いているのが一番だけどね。
奇跡なんかじゃなくて、自分に出来ることと出来ないこと、起こる現実、
全てを受け入れたからこそ、幸せなんだと思うな。
「命をかけてきみのものになる。」
うん、やっぱりこれが正解なんだよ。

文章は、とっても読みやすいよ。
台詞が多いっていうのもあるけど、分かりやすくてスッと入って来るっていうのが一番の理由かな。
優しくて、心に沁み入るような文章だよ。
本の世界から抜け出すのがちょっと辛くなっちゃうくらい、心地良いかな。
後、この作品は文学作品を多数引用しているの。
「命をかけてきみのものになる。」も「チボー家の人々」の引用だし、太宰治や芥川龍之介も出てくる。
里香が読書好きっていうのが理由なんだけど、何でかな、本が好きなヒロインって、好き。
……ナルシストじゃないよ?

イラストは、山本ケイジさんっていう人が描いてる。
他では超肉っていう名前で描いていることもあるみたい。
……あたしはこの人のイラスト、すっっごく、好き。
里香のイメージがとっても良いのは、イラストの影響もとってもあると思う。
イラストで里香が笑顔だと、凄く嬉しくなるもん。
この人以外、里香を描ける人、描いて良い人は居ないと思う。
……どうして完全版はイラストを抜いちゃったのかな。それが、凄く悲しい。
イラストがあって初めて「半分の月がのぼる空」なんだとあたしは思うな。
文章だけじゃ、魅力が半減だよ。

キャラクター
里香が、とっても可愛いっ! ……っていうのは散々言ったから、他の人の事を書くね?
このお話は確かに、裕一と里香の物語なんだけど、決して二人だけじゃ成立しないお話なの。
協力してくれる友達と、現実を突きつける大人達。両者が合わさって、裕一を成長させてくれる。
特に大人達、里香のお母さんや里香の主治医の夏目先生の経験則は、
もう一つの「半分の月がのぼる空」だと思う。

この物語に出てくる人物に、完璧な人なんて居ない。
でも、だからこそ一言一句が心に響くんだと思うな。

裕一と、裕一のお父さんとの関係も、注目かな。
結局、裕一のお父さんは何だったんだろうね?
物語に於ける必要性を、少し考えながら読むと、良いかも。

雑記
あたし達には、寿命が無い。
だから、裕一と里香の気持ちを、本当には理解出来ていないかもしれない。
でも、もし本当に大好きな人が、突然目の前から居なくなるとしたら。
絶対に、自分より先に居なくなる――それも後少しで――と、分かっていたら。
……あたしは、好きにならない努力をするのかな。
それとも、忘れる努力をするのかな。
どっちにしても、好きで居続けることなんて、出来ないよ。
きっと、絶望しか残らないから。それが、分かっているから。
でも、裕一はそれら全てを受け入れて尚、里香を好きになることを選んだんだよね。
それは、簡単なようで、すっごく難しいことなんだと思う。
自分の一番好きな人が、笑って最期を迎えられるように努力する。
それは自分の人生を犠牲にしなくちゃいけない。
……やっぱり、凄いことだよ。普通は、出来ないよ。
もしあたし達に寿命があって、諠か言葉が余命幾許だったら――
――想像したくない。きっと、笑っていられないから。
うん。凄いよ、裕一。

……今更なんだけど、本の内容、沢山書いちゃった。
これ、ネタバレだよね? うーん、どうしよう……。
…………知っていても楽しめるから、良いかな?