タイトル 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet
レーベル富士見ミステリー文庫
第1巻発売日2004年11月15日
既刊最新刊発売日2004年11月15日
最新刊発売予定日
著者桜庭一樹
挿絵むー
既刊1巻(完結)
漫画化
アニメ化
その他このライトノベルがすごい!2006 作品部門3位
2007年2月富士見文庫版、2009年2月角川文庫版発売(両者挿絵無し)

おきに度
燃★・萌☆★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
笑★・シリアス☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ストーリ★・キャラ☆★★★★★★★☆☆☆
エロ(★が多いほど↑)★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
世界同世界現代
恋愛ほぼ無し
ストーリ10
推移
テキスト10
キャラクター
挿絵10
雰囲気
独自語ほぼ無し



文章全般
この物語は……。大人になりたい少女と、人魚姫の物語。
早く大人になりたくて、その為には『実弾』が必要っていう、山田なぎさっていう女の子が居るの。
実弾って言っても、本物じゃないよ。比喩、かな。大人になるには、人を殺せる実弾が必要。
そんななぎさのクラスに、ある女の子が編入してくるの。
海野藻屑っていう、ある芸能人の娘の女の子。変な名前だよね?
藻屑は、足を引きずっているし、スカートの下には打撲の跡があるし、言動ははっきり言ってオカシイ。
自分を人魚って言い張るし、すぐに嘘をつくし、
常にミネラルウォーターのペットボトルを持っていて、どこでもガブガブ飲み始めるの。
……あたしだったら、親交を深めようとは、思わないかな。
でも、なぎさとは何故か親交を深めるようになるの。
虚言癖があって、我が儘で、ストックホルム症候群の女の子。
大人になるとは正反対の、いわば『砂糖菓子の弾丸』。
砂糖菓子の弾丸じゃ、人は殺せない。
そんな藻屑が、「バラバラ死体になって惨殺されている所」から本は始まるの。
この物語は、回想録。砂糖菓子の弾丸で大人に対抗した、少女たちの物語。

この作品は、狂気だね。全てが狂ってる。
だけどね、諠。物語の根本はもっと簡単なこと。
子供は大人に勝てない。砂糖菓子の弾丸じゃ、人は撃ちぬけない。ただ、それだけ。
主人公は、最後にそれを知る。人魚姫が泡となって消えてしまうから。
でも、諠。大人になるって何なんだろうね。
どうしたら、大人になれるのかな? ……実弾って、何処にあるのかな?
きっと、自立したら分かるんだよね。
それまでは年齢や外見が大人でも、砂糖菓子の弾丸のまま。実弾を持った大人には勝てない。

とっても短いのに、とっても心に響く作品だよ。
すぐに読めちゃうと思うから、絶対に読んで欲しいかな。

テキストはとっても読みやすいよ。
残酷な部分は残酷に書かれているから、少し、注意だけど。
残酷な中に優しさを孕んでいるような、そんなテキスト。

諠は、どう思う? 内容と合っていないと思うかな?
確かに、残酷で狂気で、グロテスクな文章には合っていないと感じるかも知れない。
でもあたしは、この絵ほど似合ってるものは無いと思う。
だって、甘いでしょ、優しいでしょ、可愛いでしょ?
そんな絵だから、文章が引き立つんじゃないかな。
『砂糖菓子の弾丸』として、ここまで合っている絵も無いと思うな。
絵がホラーだったら、そこまで引き込まれなかったと思うもん。

……だから、富士見文庫版や角川文庫版じゃなくて、富士見ミステリー版を読んで欲しいな。
この絵が無いと、この作品の本義が曖昧になっちゃうよ。


キャラクター
さっき言った通り、変だよ。変っていうか狂ってるのかな。
藻屑は最初、本当に不可解な行動を取るから、はっきり言って気味が悪いかな。
……男の子はそれでも外見が可愛かったら騙されちゃうんだよね。諠も、そうなのかな?
あたしは、なぎさと同じ風にしか感じなかった。寧ろ見た目が可愛い方が気味悪く感じちゃうよ。
……でもね、やっぱり普通の女の子なんだよ。人魚姫にならなければならなかった、女の子。
とっても悲しいけれど、とっても残酷だけれど、「ありがとう」って言いたいかな。

藻屑のインパクトが強すぎて、他のキャラクターの印象がどうしても薄くなっちゃう。
なぎさのお兄さん友彦だってメインテーマに関わる大事なキャラクターなのにね。
格好良くて、達観しているように見える、友彦。なぎさにとっての、貴族。
……自分の殻に閉じ籠っているのと、達観しているのとでは、やっぱり違うよね。

雑記
『実弾』を手に入れたら大人だけど、大人だからって『正しい』とは限らないんだよね。
担任の先生。お母さん。藻屑のお父さん。正しい人、居たかな?
そう。実弾は砂糖菓子の弾丸と違って『人を殺せる』だけで、
それがあれば『正しい行動が出来る』訳じゃないの。
正しくない事でも、無理矢理押し通せるだけ。
この作品じゃあ、何が正しいのかは分からない。
……正しい事なんで、無いのかも知れないけどね。
正しい事でも、砂糖菓子の弾丸じゃ撃ちぬけない。
だから、実弾を手に入れなければならないし、子供は実弾を手に入れたい。
でも、実弾を手に入れたからと言って、撃ちぬくのが正しい事とは限らない。
何でも撃ちぬけちゃうもんね。……自分の事も。
うーん、難しいね。でもそれが、人間なのかな?

言葉はまだ砂糖菓子の弾丸だよね。……実弾を手に入れる前に、読んで聞かせなきゃ、ね。