タイトル その日彼は死なずにすむか?
レーベル ガガガ文庫
第1巻発売日 2009年06月23日
既刊最新刊発売日 2009年06月23日
最新刊発売予定日
著者 小木君人
挿絵 植田亮
既刊 1巻(完結)
漫画化
アニメ化
その他 第3回小学館ライトノベル大賞 ガガガ賞受賞

おきに度
燃★・萌☆ ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
笑★・シリアス☆ ★★★☆☆☆☆☆☆☆
ストーリ★・キャラ☆ ★★★★☆☆☆☆☆☆
エロ(★が多いほど↑) ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
世界 同世界現代
恋愛 有(メイン)
ストーリ
推移
テキスト
キャラクター
挿絵
雰囲気 10
独自語 普通



文章全般
人というものはとても脆くて儚いもの。
昨日まで元気だった人が、今日突然死んでしまうことだってある。
この物語の主人公のように。

この物語は、事件に巻き込まれて突然死んでしまった男の子の物語。
主人公、八戸鋼一は、何の変哲も楽しみも無い、とても平凡で退屈な人生を送っていた。
そんな鋼一は、薬を買おうとして爆弾テロにあって、死んでしまう。
こんなに詰らない、退屈な人生だけで僕は死んでしまうの?
……そんな鋼一の下に、マキエルっていういきものが現れる。そして、こう言うの。
「きみには<ゲーム>をしてもらう! 七年前に戻って、人生をやり直すんだ!」
七年前。十歳のころ。その時代に戻って鋼一は、“奇跡の欠片”を探すの。目に見えない、欠片を。
ゲームは最後、絶対に爆弾に巻き込まれなきゃいけない。
でも“奇跡の欠片”を手に入れていれば、今度は死なない。
だから鋼一は人生をやり直す。昔嵌め違えたピースを直すように。今度はきちんと出逢えるように。
ソフィア、とも実、弥宵。三人の女の子と、きちんと出逢えるように。
そして。
十七歳のあの日。“奇跡の欠片”を手に入れられますように。
そんな、お話。

月明様が読んだって言ってたけど、「要は人生やり直してフラグを立てまくる話じゃろ?」だって。
やっぱり、月明様は嫌い。
ねえ諠。あたし達には当てはまらないかも知れないけど、人って沢山の分岐点があると思うの。
そして、それによって出逢う人も変わって来ると思うの。
例えば、あたしと諠が出逢わない未来だって、きっとあったんだよ。
今、たまたまこうして一緒に居るけれど、もしかしたら出逢わないまま終わったかも知れない。
このお話の主人公、鋼一はそんな出逢いを逃してしまっていたの。
だから、きちんと出逢う為にやり直す。あの日言えなかったコトバを、紡ぐ。

このお話を楽しむコツはね、諠。
出来るだけ自己中心的になる事と、細かい事は気にしない事、だよ。
ゲームは、過去を変える事。それは、殆どのSFでは禁忌扱いだよね?
でも、この物語では率先してやってる。
諠はきっと、「変えたら歪みが生じる」とか「他の人がその分不幸になる」とか、考えちゃうと思うの。
でも、考えないで。自分の幸せだけを考えて。
ソフィアが他の未来で出逢う男性より、自分の方が幸せに出来るって、考えて。
これは、鋼一の世界なの。鋼一が生まれた時に始まって死んだ時に終わる世界。
だから、その世界外から来たマキエルやその世界の主人公の鋼一は、変えても良いの。
そう、考えて。
そうすると、ほら。世界はこんなに優しい。まるで夢のように楽しくて、砂糖のように甘い。
選択肢一つで、世界はこんなにも変わる。枯れ木が満開の桜のように。
夢だと思わないで。偽物だと感じないで。ただ、受け入れて。
夢を見続ければ、それはいつか現実になるから。

受け入れて読めば優しくて愛しい物語。
屈折して読めばエゴと偽りの物語。
このお話は、とても不安定な物語だと思う。

あと、七年間を一冊に纏めるのは、ちょっと難しかったかな?
一気に、進んじゃうの。だから、恋愛も人間関係も、とっても簡単。何事も無くそのまま続くだけ。
だから、ドラマ性は無いよ。描写も色々不足してる。
この物語は、ただ、幸せになる為だけにあるの。

絵は、植田亮さん。色んなライトノベルの挿絵を描いているよね。
植田さんの絵は、小学生時代を描いているこの物語に、とっても合っていると思う。
特に、ソフィア。植田さんだから、こんなに可愛らしい白人の女の子が描けたんじゃないかな。
でも、表紙の絵と比べて、挿絵のソフィアはちょっと粗があるのが、残念かな。安定していないの。

キャラクター
ヒロインは、ソフィアととも実と弥宵。どの子も、とっても良い子。
そして、鋼一が死ぬ前の世界では、皆鋼一とは関係無くなっている人。
物語の中では、ソフィアとはすぐに仲良くなる。そして、お互いにすぐに好きになる。
それを見ていると、人の縁って不思議だなって思えてくるよ。
たった一言で、こんなに違う未来が待っているなんて。
……勿論、これは物語だって分かってるからね?
あたしが好きなのも、やっぱりソフィア。
こんなに真っ直ぐで一途な女の子、物語でもあんまり居ないよ。
本当にそうなのか、描写不足なのかは分からないけどね。

この物語は、鋼一を救う物語であるのと同時に、ヒロイン達を救う物語でもあるんだよ。
だから、もしまだ自己中心的になりきれなかったら、そう考えて欲しいな。
読めば、自ずからそう考えるとは思うけれど。

雑記
これは、ソフィア達の居ない世界から居る世界に変わるから、面白いんだと思うな。
だって、もし逆だったら。居る世界から、突然居ない世界になったら。きっと、凄く悲しい。
一度手に入れたら。一度、温もりを知ってしまったら。もう知らなかった頃には戻れないんだよね。
じゃあ手に入れない方が良いのか。
失くしてしまう可能性に怯えて、温もりを知らない方が良いのかって言ったら、絶対そんなこと無い。
ソフィア達の居る世界だって、いつかは終わってしまう。
けれど、最初から鋼一の所に居ない世界と、いつも隣に居る世界。どっちが幸せだと思う?
分かるよね。諠なら、分かってくれるよね。
……話が逸れちゃった。
うん。順番が逆になるだけで、印象は真逆になる。
それ程、ソフィア達は鋼一にとって大切な人達なんだよ。
ちゃんと出逢えて、良かったね。