タイトル たま◇なま
レーベル HJ文庫
第1巻発売日 2007年07月01日
既刊最新刊発売日 2009年02月01日
最新刊発売予定日
著者 冬樹忍
挿絵
既刊 7巻(完結)
本編 たま◇なま 生物は、何故死なない?
たま◇なま あなたは、死にますか?
たま◇なま 生きている、理由
たま◇なま ほしいものは何ですか?
たま◇なま こわいものはありますか?
たま◇なま 生きている、日々
たま◇なま キミは、なぜ生きている?
漫画化
アニメ化
その他 第1回ノベルジャパン大賞<大賞>受賞作

おきに度
燃★・萌☆ ★★★☆☆☆☆☆☆☆
笑★・シリアス☆ ★★★☆☆☆☆☆☆☆
ストーリ★・キャラ☆ ★★★★☆☆☆☆☆☆
エロ(★が多いほど↑) ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
世界 同世界現在
恋愛
ストーリ
推移 終盤下落(特に最終巻)
テキスト
キャラクター
挿絵
雰囲気
独自語 やや多い



文章全般
高校の入学式当日に両親と妹を交通事故で亡くして転校した、不幸な少年がいました。
始業式当日、家の居間で不思議な少女と出逢います。そして、こう言われるの。
「きさま……私のつがいに、なれ」
って。つがいっていうのは、うん。わかるよね?
これがお話の導入部分。
ここから始まるのは、『死』を題材にした、不幸な少年と、地球外生命体の少女の、成長譚。
うん。地球外生命体なの。つまり、このお話はSF。
……諠、苦手だったっけ? でも面白いよ、このお話は。
だから、読んで欲しいな。

ちょっとだけお話の説明をしちゃうね。
えっとね、すっごく昔に、宇宙で宝石みたいな外見をした生命体が生まれたの。
生命体って言っても動くわけじゃなくて、情報だけ持っているような感じかな。
その生命体はずーっと宇宙をたゆたっていたんだけど、
或る日突然、「死にたい」って思うようになるの。
だけどそれは、何て言うのかな。
全く死にたいって思っている訳じゃなくて、勿論反発する思いもあったの。
でも、またながーい時間をかけて、「死にたい」っていう思いは宝石中に感染しちゃった。
完全にその思いに支配される前に、宝石は或る行動に出るの。
地球に衝突してバラバラになって「自死」を止めるっていう行動。
そしてそれは現実になるの。結果として宝石はバラバラ。
統一した意思は無くして、砕けた宝石個々が意思を持つようになるの。
でも肉体が無いと行動は出来ない。
だから、その衝突した時に死んじゃった人と融合して、活動するようになるの。
さっき言った少女――由宇もこれ。
で、「死にたい」っていう自死とそれ以外の部分に分かれているから、お互いを攻撃するの。
自死は宝石全部が死ぬように。それ以外の宝石は自死が死ぬように。
その争いに普通の人を巻き込んだお話が、これ。
……本当はもうちょっと複雑なんだけど、こんな感じかな。

このお話のメインはね、主人公――透と由宇の交流なの。
……本当は他の仲間との交流もあるんだろうけど、あたしはそれよりこっちに重きを置きたいかな。
由宇は最初、つがいになれって言ったよね?
それは、子孫を増やして日本を支配して、人類ごと自死を消滅させるっていう計画があったからなの。
滅茶苦茶、だよね?
そういう風にとんでもない事を言うし、行動もすっごく恐い――透が死ぬのか試したり――んだけど、
それは物を知らないから。
すっごく昔から存在してきた宝石でも、人としては生まれたばっかりなの。
だから、恐がる必要は無いの。ただ、教育が必要なだけ。
だから透は由宇に色んな事を教えていくの。まずは、人に刃物を向けちゃいけませんっていう事から。
その交流というか、日常が、とっても微笑ましくて、大好き。テーマを忘れちゃいそうになる。

……思い出したんだけど、このお話のテーマは「死」なの。
「どうしていつか死ぬのに、人は生きているの?」
とか、そういう答えるのに困るような事が、このお話のテーマ。
あたしが言っても説得力無いし諠にも分からないだろうけれど、ね。
でも、そういう暗いテーマなのに、このお話はとっても明るい。
そのギャップが、このテーマに対する答えになっている気もするかな。

途中から、さっきも言った「自死」が出てきて、戦いになっていくの。
そこから、段々お話が、何て言うのかな。詰らなく……なってくる。
勿論、由宇や仲間との交流は面白いんだけど、
ちょっと……分かり辛いし、無理矢理な感じがするお話になってくるんだよね。
後は、透が好意を寄せていた、灯璃って言う子に年上の彼氏が居る事が分ったり、
本筋と関係無い所で、余計な事が多かった気がする。別に居る必要、ないと思うんだけどな。
あたしはそうでもなかったけど、諠は、読んでてショックを受けるような気がする。何となく、だけど。
纏め方も、中途半端だった。そんな終わり方なの? っていう感じ。
明かされない事も多いし、最初と最後で全然違うお話になっているような感じがする。
だから、由宇と一緒に成長するお話だと思って読んだ方が、良いよ。その方が、楽しめると思う。

挿絵は、魚って人が描いてる。そのまま「さかな」って読むみたい。……変わってるよね?
絵は、とっても合っていると思う。特に、由宇が、ね。
気が強いんだけど寂しがり屋で、透の事を誰より必要としている。
そんな子をすっごく上手く表現できていると思う。
何て言うか、ぷにぷにしてるの。とっても、可愛い。
ただ、所々雑な感じだったのが、ちょっと残念かな。
諠の持ってるゲームの原画もやっているみたいだったからちょっと見たけど、もっと凄く上手かったもん。

キャラクター
はっきり言っちゃうとね? あたしは、由宇と灯璃以外は要らないんじゃないかなって思った。
確かに、学校の友達は大事だし、透と由宇が成長する要因にもなってくれるから、
本当は必要なのかも知れないけど。
でも、透の……パーティ? には要らなかったんじゃないかなって思う。
他にも、色んな人が出てきて、凄く中途半端な立ち位置でストップするの。
だから、キャラクターは由宇と灯璃以外は、ちょっと、微妙かな。
灯璃もさっき言ったみたいな事になるから、由宇しか残らない。
透の周りには沢山人が居て、好意を持ってくれている人も沢山いるのに、
キャラクターとしてきちんとしているのは由宇だけなの。
確かに由宇が一番近くに居たし、描写も多いし、メインヒロインなんだけど。
登場キャラを増やすなら、由宇だけじゃなくて、他のキャラももっとちゃんと書かないと、ね。

ただ、その分、由宇はとっても魅力的だよ。すっごく、可愛い。
だんだんと人間味が増してきて、色んな感情が芽生えてくるし、色んな行動をするようになる。
そしてその行動の全てに、透が関わって来るの。強制されているわけじゃないのにね。
まるで、由宇を形成する一部に透が居るかのように、懐いてる。
……ちょっと、諠と言葉に似ているかな?

雑記
文章がね、なんだか、ゆっくり噛みしめるかのような書き方をしているの。
多分、句読点が多いからなんだと思う。
一語一語、とっても大事な物を扱うかのように、区切る。
だから、読んでいてとっても安心するし、落ち着くの。
周りの音が一切聞こえない場所で、二人だけで会話しているかのような、穏やかな感じ。
例え言い争いをしていても、何となく、微笑ましく思ってしまうような書き方。
それが、このお話の特徴だよ。
でも逆に、ギャグの部分は一切句読点は付けないで、一気にまくし立てるかのように言ってる。
そういう使い分けが、このお話に緩急を付けて、とっても読み易くしているんだと思うな。