-Prologue-

 "あーあー、てすてす。聞こえますか?"

 静かなる社に響く割れた音。
 「受」のヒトカタより漏るるえをとめ、言葉の声。

 "えっとですね。もしこれを再生かなにかで聞いた方がいましたら、そのまま聞いていて欲しいです。……なんで発信用なのに「攻」って書いてあるのでしょう。って、そんなことはどうでもいいです。
 あのですね。ちょっといろいろありまして、帰れなくなっちゃいました。たぶんそこには誰もいないと思いますので、玄関に留守って張り紙とかしておいていただけますか? ……あ、もしどろぼーの方とかでしたら、あんまりそこら辺のものに触らない方がいいです。触ればわかりますけど。"

 "……これってやっぱり帰れない理由とかもいわなきゃダメなんでしょうか。ダメですよね。"

 "…………えっと。"









"ちょっと、穴に落ちちゃいまして。"







       ふわり


                                    ふわり


               おちて
                           




                       おちて









                     
どこへいくの?







Kotonoha's Adventures in Wonderland

-Story-

 言葉は退屈でたまらなくなって来ていた。縁側で紗綾の側に座っていたけれど、何もすることは無いし。幾度か紗綾の読んでいる本を覗かせてもらったけれど、どうしたって読む気にならない。「本なんてどこがいいんだろう」と心の中でごちる。
 言葉は、あれこれ考えた。そうでなければ眠いし暑いし変になりそうで。
 えっと、主さまが帰ってきたらゲームとかしようかな。それともお茶にしようかな。今日は暑いからかき氷とかいいかも。……でも氷を削る元気がないかも。
 などと考えていると突然、白い何かが言葉の横を駆けて行った。モノクルを掛け、チョッキを羽織り、忙しそうに走る白くてふわふわもこもこの――

「……主さま?」

 やっぱり神さまとか見ているんでしょうか。願ったら主さまが帰ってくるだなんて!(言葉はこの後になって、諠主がこんな恰好をしていることが変だということや、そもそも彼が神だということに気付いたけれど、その時は全くいつもの諠主だという気がして)
 しかし、そのふわもこ諠主が時計を取りだして「やばい、さーやとの待ち合わせに遅れる!」などと叫び一層駆けだした時には、言葉も思わず飛び上がった。何故って、流石に諠主がふわもこで時計を見ているなんておかし――「なんでさーやさんと待ち合わせしてるんですか主さまああああああああああああ!!!」――いからではなく、今まで覚えたことの無いような激しい嫉妬心からだった。紗綾さんならあなたの隣に居ましたよね?
 嫉妬心に駆られてふわもこ諠主を追い猛然と駆けだした言葉は、丁度諠主が大きな穴へピョンと飛びこんだのが目に入った。
 言葉もすぐさま続いて飛びこんだ。心は驚くほどに落ち着いていた。不思議と笑みがこぼれる。――この後諠主をどうするか、はともかく、この後どうなるか、についてはてんで頭に無かった。




稀神大社デビュー作『Kotonoha's Adventures in Wonderland』
言葉さんが戻って来たら製作開始?

-products-
タイトル:Kotonoha's Adventures in Wonderland
ジャンル:時間と、世界と、神さまを巻き込んだふぁんたじーNVL
  価格:8800円(税抜)
 発売日:未定

-Spec-
対応機種:PC-9801
CPU:Intel 8086のみ
空きメモリ:4GB以上
空き容量:4.9GB以上
メディア:5.25インチ2HDフロッピーディスク4000枚
レイティング:神階従三位以上推奨

-Staff-
原画   かずしま
シナリオ まれびと

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