タイトル ToHeart
ブランド Leaf leaf.gif
発売日 1997年05月23日
ジャンル ビジュアルノベル
対応OS Windows95/98
価格 8800円
中古相場 680円
原画 水無月徹ラー・YOU
シナリオ 高橋龍也、青紫
音楽 石川真也、中上和英、下川直哉
ボイス 無(全年齢版は有)
FD
全年齢版
─春が、すぐそこまで来ていた。

パステルカラーのタイルが敷き詰められた歩道を歩く。
暖かい日溜まりのなか、道端にはいつものように鳩たちが群がっていた。
見慣れた景色、いつもの朝。
ただ、ゆるやかに吹く風に、少しずつ春の訪れを感じさせるものがあった。

「また、少し暖かくなったね」
オレの顔を覗き込んで、あかりが言った。
前髪がちらちらと風に揺れていた。
「もう春だもんね」
「そーだな」
無感動なオレの反応に、なにがおかしいのか、あかりはくすっと笑った。


トゥハートは高校生活を舞台に繰り広げるハートフルな学園マルチストーリーです。
主人公はごく普通の高校生。
幼なじみの『神岸あかり』『佐藤雅史』、中学からの友人『長岡志保』たちと
賑やかな高校生活を送っています。

そして訪れた3月、4月。
さわやかな春風とともに、主人公の恋愛ストーリーが始まろうとしています。
ヒロイン紹介
no image 神岸あかり
主人公の幼なじみ。
同い年の16歳。物心つく前からの付き合いで、主人公のことを誰よりも理解している。
面倒見がよく、やや世話焼き。
距離が近すぎるため、主人公の恋愛対象にはならないが、物語が進むうち、次第に…。
少々お調子ノリなところもある。
no image 長岡志保
同級生の16歳。
主人公やあかりとは中学時代からの付き合い。
カラオケなど、自分の好きなことには異常なまでの集中力を発揮する。
主人公とは仲のいい悪友といった関係で、意外にいいコンビなのかも。
no image 来栖川芹香
ひとつ年上の17歳。
物腰も優雅な来栖川グループのお嬢様…なのだが、
黒魔術や降霊術などのオカルトが好きで、まわりから変な目で見られている。
いつもぼーっとしていて、なにを考えているかわからない。
ふとしたことから、主人公のことが…。
no image 保科智子
同級生の16歳。関西出身。
なにげない出会いのあと、進級して同じクラスに、そしてクラスの委員長になる。
成績優秀な模範生だが、いつもクールで、あまりまわりとは話したがらない。
中には彼女のそういう部分が気に入らない生徒もいるようだ。
no image 松原葵
ひとつ年下の15歳。総合格闘技の同好会を作ろうと、一生懸命頑張っている。
素直で礼儀正しく、前向きな性格。
しかし、まわりとかけ離れた自分に対し、悩みや不安を感じていたりする。
主人公を先輩と呼び、慕ってくる。
no image マルチ
正式名称 HMX-12型。
来栖川エレクトロニクスが開発した最新型家庭用ロボット、その試作型。
主人公の高校に生徒として試験導入される。
人間に喜んでもらうのが大好き。
感情が高まると、ときどきオーバーヒートで倒れたりすることも…。
no image 姫川琴音
ひとつ年下の15歳。
入学早々奇妙な現象を巻き起こし、周囲に避けられているかわいそうな少女。
口数が少なく、他人とはあまり関わろうとしない。
どうにか力になろうとする主人公に、少しずつ心を開き始めるが…。
no image 宮内レミィ
同級生の16歳。カリフォルニア生まれの日系ハーフ。
その明るく大らかな性格と抜群のスタイルはいかにもアメリカンだが、
日本女性特有の奥ゆかしさも持ち合わせている。
ストレートな思考が傍目には滑稽で、それが周囲を和ませる。

購入動機:原点回帰
オススメ度 お気に度 シナリオ テキスト 立ち絵 一枚絵 音楽 雰囲気
10
お気に入りキャラ:神岸あかり、マルチ、来栖川芹香、姫川琴音



 序
……けほ。
だ、だからやめておけば良いのに……。そんな無理に引っ張り出すもんでもないんだから。
うー…………。でも、昔のことだってちゃんと知っておきたいです。
まあその気持ちは分からなくもないけど……。何も実物を取りださなくても。
だって、後でやりたいですし。
それにしたって……こっちの方に、ほら。
……なんです? それ。
パッケージリニューアル版。
……先にいってください!!
幕間
 文章全般について
……じゃー、はやくお話してください。
いてて……はい。
でもその前に注意事項があります。
? なんですか?
今から話すことは、あくまで今視点だってこと。僕はこれの続編に当たる『ToHeart2』だってプレーしているし、どうしたって昔の、リアルタイムの視点からは話せないからね。
そういう意味で、普段とはちょっと違う感じになるよ。
あい、わかりました。
ん。それじゃああらすじから話そうか。
主人公の藤田浩之は、両親が海外にいて一人暮らし。高校に通う彼は、色んな友達と賑やかな高校生活を送っている。そして、新しい春が来て、彼の恋物語が始まろうとしている。
……それで?
え、それだけですが。
……はい? え、それだけなのですか?
そうだけど。何か?
だって、普通はもっと色々あるじゃないですか。テーマといいますか、こう、主軸みたいなのが。
それが無いのが強みなんじゃない。大体、このちゃんも『ToHeart2』やってるじゃん。無かったでしょ? そういうの。
……いわれてみれば、そうですけど。でも、それが強みってどういうことですか?
んー……。主軸となるシナリオがあるとさ、どうしてもそこに収束するじゃない。だから全シナリオの纏まりが重視されて、主軸に沿わない無駄なものが排除されがちになる。大げさに言うと、一挙一動一言一句、全ての伏線が回収されなきゃ気が済まない、みたいな。
あー。確かに、そんな気がします。
だけどこの作品みたいに主軸となるべきものが無いと、それらに囚われないで済む。それどころが、逆に「無駄をストーリーにする」とすら言えるのかもしれない。
無駄をストーリーに……? どういうことですか?
日常パートってあるじゃない? あれって作品としてはなくてはならないものなんだけど、さっき言ったような主軸や主題がある作品だとどうしても詰まらなくなりがちなんだよね。日常なんてそんなに意味のあるものじゃないからどうしたって無駄なものを入れなきゃいけないし、先が気になるから気持ちが急いで集中できない。
わかりますわかります! 特にミステリーとかだと、続きが気になって仕方ないのに関係ないことを挟まれてイライラします!
でしょ? だけどこの作品はその日常パートの積み重ねで成り立ってるんだよ。一日一日は特別な意味を持たないけれど、毎日の積み重ねがあって、最後に初めて「無駄じゃなかったな」って思える。だから蔑ろにされがちな細かい設定に拘って、詰まらなかったり無駄だと思われがちな日常パートを物語に昇華させている。そういう作品なんだな、これは。
なんとなく、そっちの方が気軽に楽しめる気がしますね?
そうだね。纏まりを気にせず無駄を積み重ねる、というスタンスだから細かいところを気にせずに済むし。突飛な展開でも受け入れられちゃう。
あと気軽に楽しめる他の理由としては、シナリオの一つ一つ、全てが独立した『ToHeart』である、ということが言えるかもしれない。
……はい?
さっきも言ったように主題がある作品は、全シナリオ纏めて一つの作品なんだよ。だけどこれは、色んな未来があって、それぞれ正解なんてものは無い。それぞれが『ToHeart』という作品のエンディングなんだってスタンスなの。極端にいえば全部のヒロインのシナリオを見なくても『ToHeart』はどんな作品なのか分かる。そうやって気負わなくていいのが、作品としての強みだね。
むぅ。でもそれって、どうなのでしょう? 全部やらないとダメな気もしますけど。
そこが既に毒された考え方なんだよねえ。ゲームって、別にそういう風に気負ってやるもんじゃないでしょう? 好きなヒロインのルートだけをプレーする。それで良いと思うんだよねえ。Leafの前作『痕』然り、昨今のゲーム然り、それを許さない作品が多いけれど。
うにゅう……。それぞれによさがあるってことなのでしょうか?
まあ、そういうことかな。無駄を排除して物語を楽しむ作品と、その無駄を楽しむ作品。一長一短だね。
ところで、この作品のお話はどうだったのですか?
ん。まず第一印象としてはすっきりしているっていうのがあるかな。それと何より感じたのは、一つのことを深く掘り下げるシナリオだなってこと。
例えば、メインヒロインのあかりは幼馴染なんだけど、それ以外のことをあかりに求めないの。幼馴染であることを掘り下げて、「幼馴染としての」あかりだけを描いている。イベントでは常にそのことが出てくるし、なにかにつけてそこを強調する。だから話が分かりやすいし、理解しやすい。注意点が絞れるからね。
でもそれって、飽きませんか?
全然飽きないよ。主人公との関係を明確に表してくれるし、今では取ってつけたような属性にされているものも、それだけで一つの話に出来るほど掘り下げることが出来るんだってよくわかる。まあ、この作品があるから形骸化してしまったのかなって気もするけど。
使い回すことができませんからねー。
そういうことだね。『ToHeart』でこれだけ掘り下げちゃったから、『幼馴染』とか『ロボット』といった属性を他の属性と合わせて語らないと話が作れなくなっちゃった。だからピュアな感じがして今でも面白いのかな。
なるほどー。混じりっ気がないのですねー。
そ。古臭いとかテンプレの一言で片づけるのは簡単だけど、どうしてテンプレートになったのか、って考えたら、この作品が初期段階でそれをやってのけたからなんだよね。だから、面白い面白くない以前にこの作品には意義がある。
はー。なんだかすごい作品なんだってことはわかりましたけど、実際に今やって面白いのですか?
んー……。ネタのチョイスがやっぱり古臭く感じるとは思うけれど、ストレートな描写が多いから素直に読めるし、楽しめると思うよ。実際に僕は楽しめたし。
ふーん。じゃあやっぱり後でやってみましょう!
え、僕も!?
当たり前じゃないですか!
ですか……。まあ良いか、暇だし。
幕間
 イラストなどについて
ところで絵は……。んっと、素朴ですね?
良いよ、変なところで気を使わなくても。このちゃんらしくもない。
そうですか? じゃー、ヘタです。
ストレートに言えば良いってもんでも無いけどね!!
どーしろっていうんですか!!!
どうしろって……、そもそも、これ別に下手じゃないでしょう。寧ろ好きだよ、このイラスト。
へっ!? ぬ、主さま…………、はい、どうぞ。
なんで眼科の診察券を渡されなきゃならんのでしょうか言葉さん。
だって…………目が悪いか気がおかしくなったかしかないです。
酷い言い様ですね!! 確かにやる前は僕も敬遠気味だったけれども!
でも表情が豊かだし可愛いんだよ!
……まー、そういうことにしておきます。
信じてないでしょう!? 後で見てろよ!
幕間
 音楽、歌などについて
OP『Brand-new Heart』 ED『あたらしい予感』
それで、音楽はどうなのですか?
BGMは2で使われているのも多いから、2を先にやった人は聴き覚えがある曲が多いんじゃないかな。優しげなフレーズで耳に残る曲が多いよ。
ってことは、2は使い回しですか?
いや、まあネガティブに言えばそうだけど、リメイクしているし、ナンバリングなんだから共通した部分は無いとダメでしょう。
むぅ。それはそうですけど……。
で、それは置いておいて。僕はPC版よりもコンシューマ版のOPとEDの方が好きなんだよね。
ほぇ、そうなのですか。
うん。そっちの方が有名だしね。『FeelingHeart』と『それぞれの未来へ』って言うんだけど。特にEDの名前は、この作品を良く表していると思うよ。全ての未来、全てがToHeartなんだなって思える。
幕間
 キャラクターについて
で、まあ最後にキャラクターなんだけど。これが素晴らしいからこの作品は良いんだね。
……そんなにですか?
先ず主人公が良いね。本人は平凡だと思っているけれど基本的に何でもできるし、ぶっきらぼうだけれど思いやりもある。
2とはえらい違いです。
……まあそこが人気の分かれ目って気もするけど。そんな主人公だから気持ちよく話が進んでいくんだね。
次にヒロインだけれど、さっき言ったように属性で色分けされている感はすごくある。けれどそれで嫌な印象って言うのは受けない。
それも珍しいです。取ってつけたような属性で取ってつけたような行動を取るヒロインとか、多いですし。
さっきもその話をしたけれど、この作品がそういう描写をし尽くすほど完成された日常描写をしたから劣化コピーに見える、というのはあると思う。
色んなエピソードでシナリオを創っていく、振り返るとキラキラとした宝石のように光って見えるような想い出になっている、そういう作品だから。
はー。そんなにすごいのですか。
目に見えて感動する凄さ、は感じないけどね。やり終えたら「なんかよかったな」って感じることができる。そういう作品、大事だと思うよ。
……そうですね。ところで、主さまはどのキャラクターが好きなのですか?
そりゃあやっぱりあかりでしょう。あとマルチ。
……やっぱりっていってたのに早速ブレてます。
気にしない。来栖川芹香や姫川琴音も好きだよ。
ブレ過ぎです!!
……って言ってもなあ。一人当たり大まかな属性が一つだからどうしてもそうなるし。それにみんな素直で可愛いんだよ。素直で。
なんで素直って強調したのでしょう。
いや、なんでもないよ。ところで僕から言いたいことはこんなもんだけど、なにかある?
むぅ。さっきからいいところばかりいってますけど、ダメなところはないのですか?
ダメなところかあ。移植版とシナリオが違うキャラがいるところかなあ。
そうなのですか!?
そうそう。流石にメインのあかりなんかは変わらないけどね。まあそれだけシナリオ改変しても問題なく成り立つってことだよ。
シナリオの一つ一つが『ToHeart』、ですか。
そういうこと。はい、お話おしまい。
それじゃー、一緒に無駄な日常を謳歌しましょーっ!
……最後には輝いて見えると良いねえ。
幕間
 ひとこと。
1も2もADも好きやで。
  
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